前の10件 | -
1124 言霊 [詩・エッセイ]
「言霊」
座敷牢のような狭い部屋の
心の中だけで
悩んだり
苦しんだりしないで
あなたの言葉を
自由な
口の外の広い世界に
解き放ってやろう
恥ずかしがらないで
勇気を出して
あなたの言葉を
外に出してやると
言葉の神様が
あなたの言葉に魔法をかけて
言霊にしてくれるから
あなたの新しい人生は
言葉を自由にしてやることから
始まるのです
さぁ躊躇ったりしないで
解き放ってやろう
新しい世界が待っているから
1123 はなごねりぞうすい
子どもの頃の一番の想い出は寒さであった。
その代わり、その対極にある暖かさもあった。
その暖かさは、今の若い人には分からないだろうと思う。
「はなごねりぞうすい」は再掲載です。
読まれている方はスルー願います。
「はなごねりぞうすい」
にえたかな にえたかな
はなごねりぞうすいはにえたかな
はなみずをすすりあげながら
ぼくがきくと
いろりのほのおとけむりが
ぱちぱちぱちとはじきながら
まあだだよ まあだたよ
もうちょっとだよとこたえてくれました
じざいかぎにぶらさがっている
おおきななべのなかは
ぐつぐつぐつ ぐつぐつぐつ ぐつぐつぐつ
おとをたて
ゆげをたてながら
おいしそうなにおいをいっぱい
いろりばたにまきちらかしています
あたたかいいろりのまわりには
とっちゃんがいます
かあちゃんもいます
おねえちゃんもいます おにいちゃんもいます
はちにんのこどもたちが
おなかをすかせ
おなかをならし
ひとみをかがやかせながら
いろりをとりかこんでいます
ぼろやのそとは
こごえそうなさむいこがらしのよる
うらのたけやぶからきこえてくる
もがりぶえのこえが
びゅーう ぴゅーう ぴゅーう
やみのなかをはしりまわり
なきさけんでいます
すきまかぜは
やぶれどを
がたん ごとん がたん ごとん
たたいてまわっていましたが
いつのまにか
いえのなかにかってにあがりこんで
つめたいかぜをみんなにふきつけています
だけど みんなはしらんふり
はふはふ はふはふ はふはふ
おとをたてながら
しろいいきをはきだしながら
はなごねりぞうすいを
おいしそうにたべています
ぼろやのいえのひとたちはまずしいけれど
あたたかいたきぎがもえている
いろりばたのまわりには
じょうだんをいいあったり からかったり
きょうだいげんかのこえがとびかいあっても
いつもあかるいおしゃべりと
わらいごえがたえることがありませんでした
ぼろやのいえのひとたちはまずしいけれど
なぜだかなんだかわからないけれど
からだも こころのなかも
いろりのほのおのようにあたたかく
しあわせがいっぱいでした
ぼろやには
こごえそうなつめたいかぜがはいれても
ふしあわせははいれないのです
1122 黒板消し [詩・エッセイ]
「黒板消し」
わずかしか残っていない
こずえの葉っぱが
風にさらわれて行く
もうわずかしか残っていないというのに
時間という風は
黒板に白墨で書かれていた
想い出を
まるで悪戯書きのように
黒板消しで
無造作に消して行ってしまう
そして
歳月だけが
吹き溜まりの雪のように
たくさん集まり
積もり積もっていく
1121 還暦を迎えた君へ
「還暦を迎えた君へ」
今日は君の記念すべき誕生日である
この際だから少しだけでも言わして貰うことにする
もう君はちっとも若くはないんだから
僕にだけならまだしも
犬のみくにまで愛想をふりまいて
人気取りをしたり
ぶりっ子をするのは
止めなさい
君がそんなことをするから
みくは君のことを
唯一無二のご主人様だと思い込んでしまっている
だからみくは
僕には敬意を表さないばかりか
僕を見下してしまっている
それは大いに心外なことである
野良犬だった
赤ちゃん犬のみくを拾ってやったのも
僕なら
足利から神戸に新幹線で連れて帰ってやったのも
散歩をするのも
餌をやるのも
ブラッシングをするのも
すべてをやっているのは僕ではないか
君がするのは
人とお喋りをするように
みくと長々とお喋りをするのと
風呂に入れるだけじゃないか
その風呂もここんとこ寒いからなどといって
さっぱりやっていないではないか
強情な君はなんぼ言っても聞かないけれど
要らないものをたくさん買い込んできて
冷蔵庫の中に
針も入らないくらい詰め込むのは
止めなさい
そんなことをしたら冷蔵庫の役目をしないばかりか
冷凍したら不味くなるし
賞味期限だってあるんだぜ
君は冷蔵庫に詰め込むだけで
後は知らん顔
中を覗こうともしないじゃないか
いい加減にしろ
この馬鹿野郎
痩せる痩せると言いながら
僕に隠れて
甘い物やアイスを買ってきて
こそこそと隠れて食べるのは
止めなさい
みくや僕が痩せれたのに
何故君だけが痩せれないのだ
この不届き者が
恥を知りなさい
だけどたった一つだけ
君を褒めてやることがある
僕たちが結婚したとき
僕の友だちは
君が僕から逃げ出すのを予言していたのに
何か月持つだろうかと賭けをしていたのに
君は逃げ出さなかった
君に勇気がなかったのかどうかは知らないが
僕でさえ感心しているのだから
君は偉い
僕は君に命令をしておく
どんなことがあっても僕より先に死ぬな
死なれたら
たちまちのうちに困ってしまうし
迷惑をするから
死にたいのなら
僕が死んでからにしてくれ
何やかんやいっても
君は人生を一回りしてきたのだから
それだけでもめでたいことである
だから理屈なしにおめでとうを言おう
おめでとう
それから最後に一言
勝海舟のお父さんの勝小吉も
その自伝「夢酔独言」で言っている
奥方様を怖くないと心から思っている奴など
この世には一人もいないのだと
だから
こんな事書いてゴメンナサイ・・・
1120 かくれんぼう [詩・エッセイ]
「かくれんぼう」
なぜだかなんだかしらないけれど
かくれんぼうの
舞台は
いつも夕日の中だった
鬼が数を数えはじめると
青洟を垂らした
男の子も
リンゴのような赤いほっぺの
女の子も
蜘蛛の子をまき散らしたように
一斉に四方八方に走って隠れる
僕が逃げ込んだのは
でっかい銀杏の木の裏
そこへ
逃げ場を失った
二つ年上の女の子が
僕が来るなと手で合図をしているのに
無理やりやって来て
後ろから
僕の首をヘッドロックのようにして
腕で締め上げ
「文句ある」と言って
脅しあげた
二人は銀杏の木の裏で
そのまんまの姿で
重なるような形で隠れた
僕の汗だらけの首筋に
女の子の吐く荒い息が当たり
テニスボールのように柔らかい
胸の感触が伝わり
僕はなぜかドキドキしてしまった
僕の頭の中は真っ白になり
それからどれくらい時間が経ったのか
わからなくなってしまった
だけど
鬼が近づいて来て
銀杏の裏を覗き込んだ瞬間
一番先に飛び出したのは
僕だったのに
後ろから来た女の子は
僕を突き飛ばして
転がし
ゴールに飛び込んでいた
僕は胸を強打して
息が出来なくなってしまい
もだえ苦しんだ
1119 うどん [詩・エッセイ]
「うどん」
わしから見たら
今どきの子どもは
うどん粉を捏ねずに作った
出来損ないの
うどんのようなもんじゃ
実がなることのないモヤシのように
ひ弱で
歯応えもなけりゃ味もない
すぐに切れてしまう
不味い
うどんのように
うどんの味さえしやせん
昔の子どもはのぉ
悪さをしたら
学校の先生や
家族やら
近所の人たちから
うどん粉を捏ねるように
怒鳴られたり
どづかれたりぶん殴られたり
小突き回されたもんじゃった
嫌も応もへったくれもありゃせんかった
誰でも家の生業を手伝わされ
こき使われたもんじゃった
今ごろのガキは
親の手伝いをせんばかりか
親や先生と対等になったつもりでいやがる
それが偉いと思うとるんじゃから
救いようがないわいのう
うどんはうどん
何時まで経っても
うどんはうどんなんじゃ
素麺でもマカロニでもない
そこんところが
今のガキには分かっとらんのじゃ
赤銅色によく日焼けした
年輪の入った深い皺の刻まれた顔に
ランニングシャツ一枚の逞しい体つきの
お爺さんは
冬の陽射しを浴びながら
網の繕いをしていた
海と
潮騒の音が
まるで絵画のように
お爺さんに
よく似合っていた
これから何をされるんですかと問われると
後は死ぬだけじゃと言って
お爺さんは
豪快に笑った
1118 笑う口 [詩・エッセイ]
「笑う口」
すべての生き物たちの
源流をたどれば
たった一つのところに行き着き
祖先は同じであるという
そんな生き物たちの種類も
これまでに滅びたものがたくさんあるというのに
今でも二百万種類はあるという
そんなにたくさん
生き物たちがいるというのに
笑うことのできる口があるのは
人間だけ
だけど
怒り心頭に発し
涙を流し泣くのも
また人間だけ
泣いたり怒ったりするのは
哀しみであり
不幸の世界である
微笑や笑い声は
歓びであり
幸福の世界である
せっかくこの世に生を受けて
笑うことのできる口をもって生まれて来たのだから
その口は
微笑に 笑い顔に使いたい
微笑と笑い顔には凄い力を秘めている
笑うと
食べ物が美味しくなり
笑うと
体が元気になる
笑うと
人を許すことができ
笑うと
悪い心が逃げ出してしまい
笑うと
怒りや悲しみが和らぎ
笑うと
諍いや喧嘩をしなくなり
笑うと
周りの者が歓んでくれる
笑うと
一人ぼっちではなくなり
笑うと
友だちができる
笑うと
得したような気分になれるし
笑うと
笑顔が魅力的になり
笑うと
幸福になれる
笑って幸福になれるのなら
大きな口を開けて
笑いたい
1117 一本松 [詩・エッセイ]
明けましておめでとう御座います
旧年中は拙いブログにお出で頂き誠にありがとう御座いました。
本年も、どうぞ宜しくお願い致します。
「一本松」
海と空を見つめながら
背を向けず
毅然として一人で立っている
あなたを見ていると
今では歴史という名の蔵にしまわれてしまい
忘れ去られていた大切なことを思い出します
かっては
この日本にも居たという
武士(もののふ)たちのことを思い出します
潔さ
恥を知る
私たち日本人が忘れてしまっている
そんな言葉を
第一義として生きた
武士のことを思い出します
あなたには
七万本というたくさんの御方が居ました
あなたは
その御方とともに
千年に一度という
未曾有の大地震と大津波の大連合軍を相手に
迎え撃ち
共に壮絶な戦いを繰り広げましたが
御方に利あらずして
ついにはあなただけ一本を残して
すべてが薙ぎ倒され
無残にも敗れ去ってしまいました
それは正に
奇跡の中の奇跡としか言い様のない出来事でした
負け戦に追い打ちをかけるように
嘘と出鱈目によって塗り固められた愚人たち
亡国の徒によって引き起こされた
福島原発の大人災は
放射能を 空に 海に 大地に 蒔き散らかし
狭い日本の国土の一部を
死の街に
廃墟と化してしまったのでした
あなたの学名はマツ科マツ属の常緑針葉樹
生まれも育ちも岩手県陸前高田市の景勝地
樹齢は二百六十年
生まれた年は千七百五十一年 宝暦三年
長州藩に宝暦の藩政改革のあった年でした
高さは三十メートル
直径八十センチ
スラリとして背が高く容姿端麗でした
今風に言えばイケメンでした
あれから九か月
あなたは傷ついた体に鞭打ち
ひたむきに生きてきました
あなたを助けたいと思っている人が
たくさん居ます
あなたを助けようと懸命になっている人たちも
たくさん居ます
あなたから遠く離れた所に住む人たちも
あなたに生きていてほしいと
老いも 若きも 子どもたちも
すべての日本人が願っているのです
そして祈っているのです
それは あなたが
潔い
恥を知る
強くて逞しい
武士だったからです
あなたは
私たちが忘れてしまっていた
日本人だったからです
そんなあなたが今
臨終を迎えようとしています
あなたは
千年に一度の大災厄の中の
一筋の光でした
悲劇の舞台に咲く
一輪の白い花でした
悲劇は
千年に一度の大災害にあるのではなく
「ここより下に住居を建てるべからず」
などなどの
先人たちが数多の犠牲を出しながら残してくれた
尊い戒めを
私たちが守らなかったことにあるのです
喉元過ぎれば熱さを忘れる
私たちにあるのです
一本松よ
ありがとう
どうか安らかに眠ってほしい
そしてこれからも
たとえ大自然の猛威に負けたとしても
負けても兜の緒を締めて
先人たちの戒めを胸に
二度とこの様な悲劇を繰り返さないように
私たちを見守ってほしい
いつまでも先人たちの戒めを守っているか
見守っていてほしい
あなたは接木され
あなたの子は元気に
今日もすくすくと育っています
1116 ステレオ [詩・エッセイ]
たった今、産経新聞社から電話があり、
今月16日に産経新聞夕刊一面に掲載された
夕焼けエッセー「集金」が12月度の月間賞に選ばれたと連絡がありました。
ついでにインタビューを受けたのですが、想定外でもあるし、
慣れないもので、しどろもどろとなりました。
望外の栄誉でもあります。
来年1月21日の産経新聞夕刊に掲載されます。
共に歓んでもらえたら嬉しいです。
「ステレオ」
米と麹を合わせ
酒樽で醸(かも)しているときの
醪(もろみ) は
まだ本物の酒ではない
酒杜氏の巧みな采配と熟成が
旨い酒を造る
風の囁きを
聴くことが出来るのは
一つのスピーカーしか持たない
モノラルではない
音が沈黙と測りあえるほどの
音を聴けるのは
上質なステレオだけである
やがて醪は酒にはなるが
旨い酒になるとは限らない
モノラルは所詮モノラルであって
何時まで経っても
翌檜は翌檜であり檜にはなれないように
ステレオになって
風の囁きを聴くことは出来ない
1115 クリスマスイブ [詩・エッセイ]
「クリスマスイブ」
白い光のなかの
凍てつく風が
ぼくの体を起立させています
踏みしめる落ち葉は
色を無くしてしまい
輝きも失せてしまいました
秋が彼方に去ってしまうと
池には鴨が遣って来て
餌を啄み
賑やかに騒いでいます
睡蓮は
鴨たちに遠慮でもするかのように
水面から潜りはじめ
わずかに葉っぱだけが
漂うように浮かんでいます
明日はクリスマスイブ
ぼくの誕生日です
ちっともめでたくもないのに
ぼくは逃れる術を知りません
前の10件 | -







