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1424 つばくろの六ちゃんのこと [詩・エッセイ]


「つばくろの六ちゃんのこと」


燕が空気を切り裂くような見事な曲芸飛行術を見る季節になると

つばくろの六ちゃんのことを想い出す


人生五十年という言葉は死語になってしまったかもしれないが

大震災のあった翌年

わたしは昔上州といわれていた土地単身赴任したことがある

齢五十の大台に乗ったばかりであった

若い頃の一人暮らしは何ともなかったが

この歳の一人暮らしは

無性に遣る瀬無いものである


その日の雨は

しとしとしとと降ってなかなか止みそうになかった

まわりの麦畑の青が

灰色の空と対比して どきついばかりに鮮やかな色彩に見えた

それを見るともなくばくぜんと眺めていたら

軒下の洗濯竿に雨宿りの小鳥が一羽とまった

雨がしの打つ屋根の音はますますひどくなり

小鳥はなかなか飛び立てそうになかった


わたしのなかの忘れていた悪戯心が眼をさまし

ゆっくり立ち上がると

ガラス戸に近寄り そっと開けた

それでも小鳥は気がつかない

戯れに洗濯竿の小鳥にすばやく手をのばすと

掌の中には小鳥が握られていた

その柔らかい羽根ごしに伝わるぬくもりが焼けるように熱く感じられた

小鳥の名前は知らない


すぐに逃がしてやるつもりであったが

小鳥は暴れて窓ガラスに何度もなんども当たり

わたしの掌の中にもどった

少しの時間でよいから話し相手になってくれよと願いしたら

言葉が通じたのか

おとなしくなって炬燵の上にとまった


珍しい賓客に

お食事でもてなしをしなくてはならないと

傘をさして野菜畑に入り虫を探したがなかなか見つからなかった

やっと四匹の青虫をつかまえて

その青虫でもてなした


すぐに逃がしてやるつもりであったが

その小鳥はわたしに懐いてしまい掌の上にとまったり肩に乗っかかったりするようになったので

もう一日 もう一日と思っている間に一週間が経ってしまった

その小鳥はますます懐いて風呂まで一緒に入るようになってしまった

それから又一週間ぐらいたった或る日

会社から帰ると小鳥は畳の上に横たわり冷たくなって死んでいた


気まぐれおっさんの寂しさをまぎらわすために

小鳥は死んだ

その小鳥は燕であった

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1423 ノスタルジア物語〇稿改稿顛末 [詩・エッセイ]

ノスタルジア物語〇稿改稿顛末」


ご無沙汰をしております。

〇稿改稿提出日は4月17日でしたが延期をして貰い、

やっと前日提出する事が出来ました。

それは、それは悪戦苦闘の日々でしたが、

隙間の出来た頭では最善のもの出来たと自画自賛してみたり、

将又、自己嫌悪に苛まれてみたり、

複雑な気持ちではありますが、一つの峠を越えたのは間違いないものと思っております。


そのラストシーンに、この詩を載せようと思っております。


「私は風」


私は風

とどまることを知らず

流離う


私は風

あてどもなく終わりのない旅を

流離う


私は風

生れも知らず故郷も知らず

過去より来たりて明日に向かって

流離う


私は風

疑うことしか知らず

妬むことしか知らず

迷うことしか知らず

出口のない迷路を一人彷徨いながら

流離う


私は風

山を越え

海を渡り

空に昇り

眼も眩むような光の嵐のなかを走り

何も見えない漆黒の闇の渦のなかを走り

記憶を置き去りにして

彷徨う


私は風

とどまることを知らず

流離う



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